我家の猫物語

我家の猫物語

「アン、ミク、ハヅキ」の3兄弟。全て男の子。もう10年前のことになる。

国道をはさんで直線にして50Mあまりの場所から母猫が一匹ずつ咥えて我が家に運んできた。

母猫は自分の命が長く無いことを分かっていたのかもしれない。妻が子猫を運び終え安心した表情の母猫を見たのが最後だったという。妻が買い物から帰ると最後に見た場所で3匹の無邪気に遊ぶ子猫とこと切れた母猫がいた。妻は、母猫がこの家なら飼ってくれるだろうと連れてきた母猫の想いをどうしても無下にできず三匹の猫は我が家の猫となった。

三匹のうち、ミヅキは娘の職場の同僚が飼ってくれることになったが、アンとミクは我家の家族になった。アン、ミクはオス同士ということもあり、その時期には本性をむきだしにして取っ組み合いをすることもあったが、普段はお互いをなめ合うなど認めあい仲が良かった。

穏やかな年月が過ぎた。

2~3日前からアンの体調が急に悪くなった。食べ物を寄せ付けずみるみる瘦せていった。ミクは異変を感じているらしく落ち着かない。体力が落ち起きあがれなくなったアンをミクは必死に起こそうとしたが目を開けることはなかった。

それから3日、アンは旅立った。ミクはとうとう一人ぼっちになった。

私と妻はアンの亡骸を綺麗な箱に納めてシュウメイギクを一輪供え葬った。